丁寧。
賑やかな夏が終わって季節は進み、秋も少しずつ深まってきた。
まだ半袖を着る日も多いけれど、夜は肌寒くなってきたので布団をかけて眠る。
秋生まれの私にとっては毎年節目になる季節で、この1年を思い返す。
去年の秋は新しい家の建築が大詰めの時期で、やっと家づくりのゴールを迎える直前だった。
あとは仕上がりを待つばかりだったので、私は電卓を叩き新しく購入するものや処分費用、引っ越しの費用などを計算しつつ、新生活に向けてあれこれと準備を進めていた。
今思えば、膨大な量の仕事だった。
内部進学とはいえ高校3年生の子供の生活をサポートをしつつ、普段の家事炊事もこなし、頭も体もフル回転だった。
子供のマンション探しも加わり、2軒分の引っ越しの段取り。
コロナ禍でたくさんの人を自宅に入れるわけにはいかず、荷物の梱包は自分ひとりでほぼこなした。
今もメールの受信箱を覗くと、あちらこちらとの送受信の数がすごい数になっている。
自分しかやる人がいないとなれば、やるしかない。
そして、やればできるものだ。
どんなに齢を重ねても、機会さえあれば人は成長できるもの。
旦那さんに「強くなったね。」と褒められる今日この頃。
海街に引っ越してきてからは、外構工事が遅れて始まったので工事現場の中で暮らしているようだった。
着々と進む工事の様子を2階の窓から眺めるのはとても楽しかった。
外構工事も終わって人の出入りもなくなり、家の中もどうにか落ち着いて、新生活が始まった実感があるのは春からだ。
お隣の庭の桜が盛大に花をつけて、借景で我が家も華やかに春を迎えられた。
特にキッチンの窓からライトアップされた夜桜は夢のように美しかった!
そこからは海や山で豊かに時間を過ごして、家での時間も充実していた。
特に大きく変わったのが料理。
家族のために作っていたご飯づくりが、自分だけのためになった。
これが本当に楽しい。
時間に追われることがないので、手間暇をキッチリかけられる。
新鮮な季節の朝どれ野菜をどんな風に調理するか、近くの販売所では見たことのない野菜や魚に出会うこともある。
味噌や漬物、ジャムなどを手作りするのも素材と時間に恵まれているから。
加工品はほぼ買わなくなった。
お菓子もパンも手作り。
新鮮な鶏卵が手に入るので、アイスクリームさえも手作りする。
自然主義ではないので、外食もするし時にはお惣菜に手を出すこともある。
でも、料理は楽しくて仕方ない。
手をかけて時間をかけて、自分のために一人分の料理をする。
なんと贅沢なことか。
尊敬する料理家の辰巳芳子先生の言葉。
『丁寧に料理することは、丁寧に生きること。』
そう、この一年ひとりの時間を存分に使い、私は丁寧に生きることができた。
離れて暮らす家族を想い、大好きな場所で、一生懸命建てた最高の家で、自分らしく贅沢に時間を使って暮らしている。
毎日大きな海と、広い空を眺めて。
この続きはまた次回。
sea you soon.