天の声。
素敵な土地が見つかった。ついに家のことも考えなければならない。
話が前後してしまうが、本見積もりの後にローンの申請という段取りになる。土地の契約のあれこれと同時進行で、家のデザインや間取りなどを決めていかなければならなかった。
ハウスメーカーの建築士Hさんと私達の二人三脚での作業が始まった。
『夢ノート』をもとにプランをいくつか提案してくれた中で、気に入ったプランがあった。それで先に進めましょうかという段階で、STOPをかけた人物がいる。
私の姉である。
「ねえ、このリビング狭過ぎない?いや、絶対狭い、狭い。狭いって!」と狭いコールの嵐。そもそも、子供は進学予定の付属大学のそばで一人暮らしをさせる予定。夫は仕事で関西と東京を行ったり来たりの忙しい毎日を送っているので、家にいられるのは月の半分もない。夫と二人暮らしではあるけれど、ほぼひとり暮らしになる。大きな家はいらないし、老後の家事の負担も考えて小さな家を建てたかった。そのことは姉に話している。それにしても狭い!と譲らないので、仕方なくもう一度じっくり考えてみた。
姉妹のやりとりを見ていた夫が、メジャーを手に仕切り直した。
「家具はどれを持っていくの?」
これとこれとこれは持っていくと伝えると、それぞれの家具の寸法を測った。間取り図の縮尺を実際のサイズに計算して、ここに置くとこれぐらいになるよと見せていった。
結局、全部の家具は入らない。ソファーとテレビの間隔もかなり近くなってしまう。無理にすべての家具を置こうとすると、動線が遮られてしまう。
姉の声は天の声だった。
今の生活スペースより狭いスペースに移るのだから、すべてのものが収まるはずがないのに、こんなことにも気が付かなかった。間取り図で見るともう少し広く見えたのだけれど。
危なかった。
そこからはどんな家具をどこに置くか、荷物がどれくらいあるか想像しながら間取りを見るようになった。建築士のHさんに何度も相談して、間取りはみんなが納得いく形に変更になった。私の思い描くスタイルやセンスをHさんが把握してくれているのと、好き嫌いがはっきりしている私の性格も相まって、割とスムーズに進むな〜なんてその時は思っていた。
間取りが決まったら、家の中のすべてのものを選んで決めていく。しかも、どんどん決めなくてはならない。ここからインテリアコーディネイターのSさんも加わった。
屋根の素材と色、壁の素材と色、床の素材と色、天井の素材と色、照明、空調、窓、建具、あげればキリがない。当たり前だけれど、寝室、リビング、廊下、玄関、キッチン、家事室、洗面所、トイレ、階段など各場所で選ぶものは変わる。
決めなければいけないものの膨大な数に茫然としてHさんに聞いた。
「これは全部私が決めなくちゃいけないんですよね?」
「大変ですが、一緒に頑張りましょう!」
頑張れるのかしら、私?
夫の担当は契約などの手続きや銀行関係。仕事の傍ら、すでに忙しく動いてくれている。
途方に暮れてても仕方ない。
悔いが残ったら、また家を建てなきゃならないと笑ったご近所のAさんを目標に、私も覚悟を決めて行動を起こした。もともと体育会系で、会社員時代は営業職だったため、ガッツと情報収集力には自信がある。集めた情報をもとに傾向を把握し、対策を練り企画を立てる。懐かしい作業だった。
まずはどんなものがあるのか、床材、タイル、壁紙、塗料などそれぞれの建材メーカーからパンフレットを取り寄せた。世に出回る家づくりのガイド本やインテリア誌を買い漁り、ネットでHPやブログを読み漁った。住宅情報難民のままでは、良いかどうかの判断ができない。時間があればご近所をワンコを連れて歩き回り、他人様のお宅にも目を凝らした。
集めた情報で、「これは」というものを、どんどんHさんとSさんのメールに添付して意見を仰いだ。その度にサンプルを取り寄せてくれたり、手に入らないものは似たものを探してくれた。
そうしてお互い膨大な資料を用意し、迎えたミーティングの日。
この続きは、また次回。
sea you soon