古き良き。
私の住む海街は都心からそう遠くないこともあり、別荘地としての歴史も古い。
明治の時代から建てられてきた瀟洒な別荘は、残念ながらこの街の中では今はもう数えるほどしか残っていない。
所有者の高齢化や後継者不足、そして建物自体の老朽化が著しい。管理をしきれずに保存自体が困難になってしまっているよう。
私が今住んでいる土地にも、かつては別荘が建てられていた。
お隣とそのまたお隣に渡って広々と建てられた、和風だけれどもモダンな建築だった。
元々の持ち主だった方にその建物が掲載された写真集を見せて頂いたことがある。
都内にあったある藩の武家屋敷が解体される折に、屋敷の一部をこちらに移築したそう。
残念ながらその別荘は解体されて土地は3分割となった。
私達の住んでいる場所にはもとあった建物を改装したカフェができて、後の二つには住宅が新しく建てられた。
今のお隣さん、そして一番奥は元々の土地の持ち主のカフェオーナーの自宅になっている。
何十年か経ってカフェが嵐の被害を受けて解体されることになった。
そして売り出された土地を私達が購入し、家を建てて今に繋がる。
元々歴史が好きなこともあり、この地域の歴史を調べている。
地元の研究会により本が出版されていたり、HPに情報もたくさん上がっているので調べがいがある。
かつての裕福な別荘族の社交界を回顧した記事なども簡単に見つかる。
政財界や文化人など華麗なる人々のその様子が、素敵な別荘とともに白黒写真にも収められている。
今は無き建物がほとんどで、本当に口惜しい。
いくつかの別荘は企業や残された家族が管理し、イベントや撮影などに貸し出したり、年に何回か一般観覧の機会を設けたりして、管理費用の捻出に努めている。
私も昭和初期に建てられたある別荘の一般公開に行ったことがあるけれど、西洋スタイルを取り入れてはいるものの、どこか日本風でモダンでとっても素敵だった。
つい最近、この別荘が宿泊施設として生まれ変わったのを知った。
最近ではこれらの別荘をリノベーションして、一棟貸しの宿泊施設にしている会社がいくつかある。宿泊のみならず、ウエディングスペースとしても使われているそう。
宿泊施設としてはとても高価だけれど、ウエディングやお祝いの会場としてはむしろ安いのかもしれない。
これからは少人数で小さく集まるのがスタンダードになるのだから、スペースの広さもちょうど良いのかもしれない。
我が子が結婚する際には、そっとお勧めしようと思っている。
この続きは、また次回。
sea you soon.